肥料データベース
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乾燥菌体肥料
乾燥菌体肥料とはアミノ酸や核酸の生産能を有する微生物を培養して目的物を抽出した後の菌体を乾燥したもの、または食品工業、発酵工業、ゼラチン工業など食品関係工場の排水を活性汚泥法で浄化したときに生じた菌体を乾燥したものである。すなわち、乾燥菌体肥料の中身はアミノ酸や核酸を抽出した微生物または活性汚泥法で発生した微生物の菌体である。
1.成分と性質
アミノ酸や核酸の生産能を有する微生物はほとんど放線菌に属するコリネ型細菌であり、その種類と内容が容易に把握する。しかし、食品関係工場の排水処理で得た活性汚泥には多くの微生物が生息して、細菌類のほか、単細胞原生動物の繊毛虫類、肉質虫類、鞭毛虫類と多細胞後生動物などもある。処理水1リットルに数千万から数億個体の微生物が生息しているといわれている。
乾燥菌体肥料は、微生物の菌体であるため、含まれている窒素とりん酸、加里はすべて有機態のものである。ただし、その細胞壁が固く、分解には時間がかかり、無機化され作物に吸収利用できるまでの時間が長い。有機肥料の中には非常に遅効性の肥料として位置付けられる。
乾燥菌体肥料は原料の出所によって、その養分含有量が大分異なる。概して水分が5~10%、黄褐色~黒褐色のものが多く、カビまたは下水の臭いがある。肥料登録基準は窒素だけの場合5.5%以上が必要で、りん酸または加里を含有する場合は、窒素4.0%、りん酸1%、加里1%以上が必要である。流通されている乾燥菌体肥料は窒素4.0~6.0%、りん酸1.0~2.0%のものが多い。弊社が取り扱っている乾燥菌体肥料は食品関係工場の排水処理で得た活性汚泥から由来したもので、窒素4%以上、りん酸2%以上を含有する。
活性汚泥には多くの微生物があり、様々な不純物まで入って植物に害を与える恐れがあるので、肥料登録の前に植害試験という植物に対する害を調査する試験が義務づけられている。したがって、流通されている乾燥菌体肥料は作物の生育安全性に問題のないものである。
2.用途
乾燥菌体肥料の原料となる菌体はほとんど単細胞の微生物であるため、細胞壁が固く、難分解で、肥効の発現に時間がかかり、有機肥料の中には非常に遅効性の肥料である。また、植物油粕や動物質有機肥料に比べて養分含有量が低く、使いづらいものである。通常、単独使用が稀で、ほとんど有機入り化成肥料または配合肥料の増量材とする。また、ほかの有機質に混ぜて発酵腐熟した後に有機肥料として施用することがある。
乾燥菌体入りの有機入り化成肥料は遅効性があり、基肥として使うことが勧められる。菌体が土壌微生物に分解されにくく、腐植物質として土壌に残す割合が多い。団粒構造の形成を促進し、土壌の通気性・透水性・保肥力等を向上させ、「土づくり」の効果がある。乾燥菌体肥料を単独使用する場合は肥料ではなく、土壌改良材と見るべきである。
3.施用後土壌中の挙動
乾燥菌体肥料は施用後、土壌微生物がそれをゆっくり分解して、菌体に含まれている養分を放出して作物の吸収に供する。
乾燥菌体肥料の分解が土壌生物、特に土壌微生物の種類と活性に依存するので、養分の無機化速度が土壌タイプ、土壌水分、土壌pHなど土壌物理性、化学性と生物性により大きく変わるので、肥効の調整が難しい。
土壌微生物に分解されなかった一部の菌体成分が腐植となり、土壌団粒形成の促進に寄与する。動物質有機肥料や植物油粕に比べて、腐植の生成量が多く、土壌の生物性(生物相)と物理性(通気性や保水性など)が改善され、農作物が育ちやすい土になる。
4.施用上の注意事項
乾燥菌体肥料は養分含有量が低いうえ、分解されにくく、有機肥料の中には使いづらいものである。ただし、土壌改良の効果が期待できるので、その使用には下記の注意事項がある。
- 単独使用を避け、速効性の化学肥料に配合して使う
養分含有量が低いうえ、非常に遅効性で、肥料効果が現わすまで時間がかかる。速効性の化学肥料に配合して、有機入り肥料として使用することを勧める。 - 尿素との配合を避ける
乾燥菌体肥料は水分が高く、ウレアーゼを有する微生物が存在する可能性があり、尿素を加水分解して、アンモニアを放出させ、揮散する恐れがある。但し、増量材として混合造粒した後、きちんと乾燥すれば、問題が起きない。また、混合後すぐ施用する場合は問題が起きない。